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ノーベル賞効果により、最近、京都大学の人気が高まっているらしい。理由は何であれ、京都大学は日本一の大学なので、その選択は悪くはないのかもしれない。
しかし、日本一の京都大学であっても、ノーベル賞を受賞するような世界的な研究者というのは、日本では、ごくわずかである。運よく世界的権威と呼ばれる学者の指導を受けることができたとしても、ほとんどは、そうではない教員の授業を受けることになる。
業績ゼロなら、せめて教育に力を入れてくれたら良いのだけれど、残念ながら現実そうはなっていない。研究が適当な人間は授業も適当であることがほとんどだ。
トップ50%論文とは
トップ50%論文とは、被引用数が世界で上位50%に入る論文のことである。
トップ1%論文が非常に優れた論文でなければなれないのとは対照的に、トップ50%論文は平凡な研究者であっても十分に可能な目標である。逆に言えば、トップ50%にも入らない論文というのは、私のブログと同じで、書いても書かなくてもどちらでもよい程度の論文である。中には例外もあるのだけれど、だって、ほとんど誰にも引用されていないのだから、そういうことになる。
トップ50%論文部門では、大学に所属する平均的な研究者の働きぶりを測定できる。したがって、日本大学ランキング全部門の中で大学の実態を最もきれいに反映するのがこの部門である。同時に最も地味な感じもするが、大学選びの参考には最適であろう。とは言え、一般の保護者や普通の高校生がこんなブログに辿り着くことはないとは思うのだけれど。
各論文部門の目的と違い
日本大学ランキングは、大きく分けて研究者部門と論文部門で構成され、論文部門は、さらに3種類の指標に細分化される。
各部門の指標 | 目的 |
---|---|
論文被引用数 | 大学全体の研究水準を測る |
トップ50%論文数 | 研究者層の厚みを測る |
トップ1%論文数 | 世界的な研究はどの程度行われているかを測る |
トップ50%論文数と論文被引用数の違い
トップ50%論文数と論文被引用数の違いはわかりにくいかもしれないので、数値例を使って確認する。高被引用論文数(トップ50%やトップ1%)と論文の被引用数は、前者が多く引用された論文数、後者は論文が引用された回数である、ということを勘違いしないようにしたい。
論文数 | 被引用数 | |||
---|---|---|---|---|
A大学 | B大学 | A大学 | B大学 | |
引用されない論文 | 5 | 9 | 50 | 90 |
トップ50%論文 | 4 | 0 | 400 | 0 |
トップ1%論文 | 1 | 1 | 1000 | 2000 |
合計 | 10 | 10 | 1450 | 2090 |
ある期間において、A大学、B大学ともに10人の研究者がそれぞれ1本、合計10本の論文を書いたとしよう。
A大学はトップ1%論文1本にトップ50%論文が4本、トップ50%に入らなかった論文が5本とする。被引用数の合計をそれぞれ1000回、400回、50回とすれば、全部で1450回となる
B大学も同じくトップ1%論文は1本だが、トップ50%論文は0本とする。しかし、トップ1%論文の被引用数をA大学の倍で2000回だとしよう。この場合、被引用数は、A大学1450回、B大学2090回で、B大学の方が多くなる。
したがって、被引用数のみで大学を比較した場合には、B大学はA大学よりもレベルが高いと判断される。しかし、それは1本の論文によって数字がかさ上げされたものであって、研究者全体に目を向けると、A大学の方が層が厚いと言える。
被引用数は、一部の影響力ある論文によって、ある程度数値が引っ張られてしまうことがあり、特に規模の小さい大学ほど、その効果は顕著である。一方で、トップ50%論文数は一部のスーパー研究者によって数値を引き上げることができず、大学に所属する研究者全体のレベルが低いと、高得点は狙えない。
日本大学ランキング2019-2020トップ50%論文部門
順位 | 序列 | 大学 | 区分 | 得点 |
---|---|---|---|---|
1 | A | 東京工業大学 | 国立 | 100.00 |
2 | S | 京都大学 | 国立 | 98.82 |
3 | S | 東京大学 | 国立 | 89.41 |
4 | A | 大阪大学 | 国立 | 80.68 |
5 | A | 名古屋大学 | 国立 | 76.19 |
6 | B | 東京農工大学 | 国立 | 70.66 |
7 | B | 東北大学 | 国立 | 65.53 |
8 | B | 北海道大学 | 国立 | 64.57 |
9 | B | 九州大学 | 国立 | 64.41 |
10 | 神戸大学 | 国立 | 45.69 | |
11 | 広島大学 | 国立 | 42.74 | |
12 | 東京医科歯科大学 | 国立 | 41.72 | |
13 | 千葉大学 | 国立 | 40.18 | |
14 | 金沢大学 | 国立 | 40.00 | |
15 | 東京理科大学 | 私立 | 39.82 | |
16 | 慶應義塾大学 | 私立 | 38.26 | |
17 | 大阪市立大学 | 公立 | 38.21 | |
18 | 熊本大学 | 国立 | 37.84 | |
19 | 筑波大学 | 国立 | 37.69 | |
20 | 大阪府立大学 | 公立 | 36.77 | |
21 | 岡山大学 | 国立 | 35.97 | |
22 | 徳島大学 | 国立 | 33.82 | |
23 | 岐阜大学 | 国立 | 31.64 | |
24 | 富山大学 | 国立 | 31.13 | |
25 | 群馬大学 | 国立 | 30.83 | |
26 | 首都大学東京 | 公立 | 28.58 | |
27 | 新潟大学 | 国立 | 27.95 | |
28 | 横浜市立大学 | 公立 | 27.69 | |
29 | 信州大学 | 国立 | 26.20 | |
30 | 長崎大学 | 国立 | 25.87 | |
31 | 三重大学 | 国立 | 25.77 | |
32 | 愛媛大学 | 国立 | 24.55 | |
33 | 山口大学 | 国立 | 23.78 | |
34 | 鳥取大学 | 国立 | 22.89 | |
35 | 早稲田大学 | 私立 | 22.39 | |
36 | 山形大学 | 国立 | 21.85 | |
37 | 鹿児島大学 | 国立 | 21.51 | |
38 | 順天堂大学 | 私立 | 17.37 | |
39 | 近畿大学 | 私立 | 15.56 | |
40 | 日本大学 | 私立 | 14.02 | |
41 | 北里大学 | 私立 | 11.48 |
帝国大学の壁がいかに高いかがよくわかるグラフである。9位の九州大学と10位の神戸大学の間に20点近くもの差が開いた。ちょうどスキーのジャンプ台のようだ。
東京農工大学が6位で東北大学に勝ってしまったが、自然科学系の大学には有利なランキングとなっている。点差を考えれば、東京農工大学は実質的に9位と考えるのが自然である。同じ理由から、1位にはなったが、東京工業大学はA評価にしている。
なんとなく旧帝大最下位疑惑が常に付きまとう北海道大学であるが、僅差で九州大学を破った。